いつもご観覧いただきありがとうございます!
先日インスタでカナダの犬雑誌を簡単に紹介したのですが、非常に先進的で良い内容の本なのでここでは引用を用いてもう少し踏み込んでみようと思います。
2021年出版のカナダの犬雑誌を紹介
紹介するのは年間発行のCANADIAN DOGS ANNUALという雑誌です。
おおまかな内容はこんな感じ↓
- ライフスタイル
- 犬とCOVID-19
- トレーニングと行動
- ヘルスとグルーミング
- 子犬の社会化ガイド
- 犬が登場するポップカルチャー
- 犬種紹介
- ブリーダー広告
これだけ見ると日本でもよく目にする本やメディアと同じ様に見えますが、買ってみてびっくりしました。
記事を書いているトレーナーは皆さん最新の科学に則った人道的なトレーニングを行なっていて、「タイミング良く叱りましょう」や「上下関係を」などが一切出て来ないではありませんか。
愛犬家の皆さんにとってはとても興味深いですよね?
それでは少しずつ見ていきましょう!
犬を犬として育てる大切さ
犬には食べ物、水、愛情と同じくらい自由が必要!というお話です。
ここでは犬を犬にするための初歩的な3つの方法として、
- お散歩で匂い嗅ぎ
- 選べるおもちゃ
- 犬種のTO DOをさせる
と書かれています。
①犬を公園に連れて行く時は(中略)あなたの犬が道をリードできるようにします。
彼に匂いを嗅がせて、彼が望むところに従って行ってください。
彼が悪い方向に進み始めた場合は場所を指定しますが、そうで無い場合は長居して匂いを嗅いだり自分のペースで動ける様にします。
②社会化が出来ているならペットショップでおもちゃを嗅がせて選ばせます。通路を彼のペースで。
このアクティビティは自宅でもできます。床に置いてどれが欲しいか尋ねます。
③あなたの犬が何をする為に飼育されたか知っていますか?
彼が彼になるために必要なツールを与えるだけです!
良い関係とは、ギブ アンド テイクの関係です。あなたの犬のニーズを満たす事を忘れないでください。欲望も!
CANADIAN DOGS ANNUAL 2021 p31
まだまだリーダーウォークしか指導ができないトレーナーや訓練士が多いなか、①の様な事を言えるトレーナーは少ないのではないのでしょうか。
ただしロングリードで限りなくストレスフリーのお散歩を実行するとしても、人間がリードワークを学び、犬にバウンダリーを教え、必要に応じてリードをたぐったり固定したり、犬を呼び戻したりして安全管理やマナーを守る事は前提となります。
「良い関係とは ギブ アンド テイクの関係、犬のニーズと欲望を満たして」…凄くないですか!?
日本だけでなく世界的に、古めかしい軍国主義的犬の躾から抜け出せていないプロは多いです。
上下関係・主従関係、主導権を握りましょうと言う支配型トレーナーや訓練士達をもう通り越して、一般かいぬしさんである読者層に犬と共生しましょうと直接語りかけているのです。
ペット業界は研究者+先進的なプロと顧客が古いプロを挟む様にして変わって行くのかもしれませんね。
社会化のガイド
例えば他の犬に激しく反応する犬を社会化させたい場合、
首を吊ってお尻を押さえつけ我慢や諦めを教えようとする
スリップリードやプロングなど首が絞まって痛みを与えるツールを使っていきなり近すぎるすれ違いを行なったり、いきなり合流させて慣らそうとする
わざと吠える距離に連れいていきリードショックを加えて叱る
などのやり方では、非常に危険で犬の精神を打ちのめしてしまいます。人間への不信度も膨れ上がるでしょう。
それでもニコニコと尻尾を振って来てくれるのはいつも与えられる嫌悪刺激を予測して、過剰にへりくだって「怒らないでください、お願いします」と言っているのであって、100%安心して慕っている訳ではないのです(ボディランゲージを見よう)。悲しいですね。
正しくは、社会化の為には保護者である人間が
犬が刺激に反応するしきい値を割り出し、安心の距離を取って美味しいものを食べたりして良い経験を積んでいく
つまり拮抗条件づけと系統的脱感作をしていきましょう
という事です。そのために人間がボディランゲージを学ぶ事が基礎的な力になります。
この記事を書いたトレーナーさんは次の様に結んでいます。
望ましくない行動を抑制しても上手くいきません。抑制は、その行動の理由に対処する事はできません。
例えば唸る犬を絶対に罰しないでください。
(中略)唸りを罰せられた犬は、唸りでは原因が無くならない事を学び、実際には噛む可能性が高くなります。
犬は攻撃を止める為に次の防御行動に移行する必要があると考えます。
CANADIAN DOGS ANNUAL 2021 p53
罰は効果的でなく、副作用が起こる可能性がある事をしっかりと発信されていますね。
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バスタイムにも正の強化を
正の強化とは
行動や反応の前にはなかったものが→行動や反応の直後に出現し→その行動や反応が繰り返される現象
行動した→何か良い事があった→その行動が繰り返される現象
食べもの、おもちゃ、かまってもらえるetc色々…▶️強化子と呼ぶ
正の強化という現象は私たちが何もしなくても日常的に起きています(もちろん私たちにも)が、私たちが強化子を使ってトレーニングや日常の相互作用の中で利用する事もできます。
先進的なトレーナーやかいぬしさんがよく言っている「正の強化トレーニング」や「報酬ベースのトレーニング」がこれですね。
ここではバスタイム中、犬の望ましい行動・作業の終わりに報酬をあげて正の強化を取り入れる事で、望ましい行動を増やしていきましょうと書かれています。
支配を捨てて報酬ベースのトレーニングを
- かいぬしが強いボス/アルファになるべきである
- 犬が前を歩いてはいけない
- 犬に先に食事を与えてはいけない
- 成功する為に罰を与える
などのドミナンスベース理論は間違っていたオオカミの観察と、修道院が出版した間違っていたしつけ本、軍国主義的気風のせいで定着してしまいました。間違ったしつけ本を出版した修道院は後々「あれは間違っていたので参考にしないで下さい」と述べています。
オオカミは実際には地位を求める残忍さではなく、人間の家族の様に協力に依存しています。
犬は私たちと一緒に進化してきました。(中略)私たちの親しい仲間であり、信頼できるガイドであり、地球上で最も成功した種の一つです。
寒い夜に犬に寄り添ったり、自分の食事の前に犬に食事をあげたり、最初に扉を通り抜けなかったりする事の影響について警告されは場合は、安心してください。その様な習慣があなたの犬の行動に影響を与えるという科学的根拠は全くありません!
CANADIAN DOGS ANNUAL 2021 p65
正の強化トレーニングは、望ましくない行動に対して犬を罰するのではなく、望ましい行動に対して報酬を与える事に焦点をあてています。この種のトレーニングをサポートする学習理論は、私たち人間を含むすべての動物が報われる行動を繰り返すというものです。
(中略)実際、正の強化テクニックは犬、トレーナー、動物の親にとって信じられないほど効果的でやりがいがある事が証明されています。
(中略)犬が要求通りに行動しない場合、罰はありません。
CANADIAN DOGS ANNUAL 2021 p66
正の強化の学習の仕組みは全ての生き物に当てはまると書かれていますね。単語だけが一人歩きして間違って広まりがちな動物業界において、こういう文章が載っているのとても良いと思います。
その他のページ
他にも肉球のケアや家での遊びなど、犬と暮らすにあたって知っておいた方が良い情報がたくさん載っていました。
また巻末には犬種紹介ページとブリーダー広告があり、昔読んでいた「愛犬の友」の海外版みたいでちょっと懐かしい感じがします。
ゴールデンレトリーバーやシェパードなどお馴染みの犬種も載っていますが、
ハバニーズ
ポーチュギーズウォータードッグ
ウィートンテリア
など日本ではあまり見ない様な犬種が載っていて面白いです!
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北米で買えるおすすめ犬の本
さて、おかげさまで最近は北米からのアクセスも多いので、北米で買える英語のおすすめ本を紹介します。
Wag/Todd
この本は英語ですが日本でも買えます!
残念ながら日本語版が出ていないのですが、日本のアマゾンではペーパーバックとKindleが出ています。Kindleだとかなりお得↓(日本のリンクです)
科学は犬を幸せにする!この本は犬と幸せに暮らすための基礎を科学的な観点から書かれています。特に子供と犬については日本ではあまりしつけ本などに載っていないと思うので、特におすすめします。
著者のZAZIE TODD博士はアニマルビヘイビア専門家です。
彼らの言うサイコロジーはスピリチュアルだったりドミナンスベースが優勢だったり、ボディランゲージの解釈などに間違いが見られるので注意が必要です。
世の中には出どころが曖昧で科学的根拠に乏しいドッグサイコロジーを提唱する方もいます(特に海外に多い)が、コンパニオンアニマルサイコロジーのブログや、サイコロジーtodayを読みましょう!
本物のドッグサイコロジーに触れたい場合は、ZAZIE TODD博士の本を読んだり彼女が運営する全て英語ですがChromeなどで翻訳をかける事ができます。