いつもご観覧いただきありがとうございます。
今回の表紙画像はまるっとまとまった言葉を探した結果、英語になってしまいました。Enrichment for Good Welfare=福祉のための充実 みたいな意味です。
前回の記事で動物福祉について書きましたが、今回は犬の福祉状態を良くするためのエンリッチメントを紹介しようと思います。
- 犬をもっと幸せにさせてあげたい
- うちの犬のQOLが気になる
- ストレスが溜まっているんじゃないか
- 問題行動で悩んでいる
などが気になるすべてのかいぬしさんに向けたヒント集です。
環境エンリッチメントって何?
動物のニーズを満たすための活動
前回の記事の中で、動物福祉5つの自由の中の5つ目「その種の持つ本来の行動に従事する自由」が特に現代の飼育下では不足しがちであると紹介しました。
エンリッチメント活動はその不足を補おうというもので、世界中の動物園などで実施されています。
例
動物園の単調な環境▶︎広さの確保、資材の提供などで動物本来の行動や好奇的探索を引き出す例
不自由な畜産環境▶︎放牧によって植物や風、直射日光など多様な環境刺激を提供し、動物は主体的な行動ができるとても簡単に言うと、動物にその種本来のやりたい事をやって貰い、ニーズを満たして貰おうという活動です。
エンリッチメントとは
- その種に適した環境、刺激、チャレンジの提供
- 動的環境、社会的機会、認知的課題がその種本来の自発的行動を促進し、やりがいを感じる事ができる
- 本来の種ごとの行動レパートリーが発現できる
- 動物にとって自然で本来の、生得的・内的に動機づけられた正常な行動パターンを実行できる様にする
参考:ブランベル・レポート、The INSTINCT onlineschool他
犬を含む飼育下の動物はその性質上、どうしても種の持つ本質的な行動や自然な環境へのアクセス機会が限られており、福祉状態が低下すると常同行動などの問題が発現してしまいます。
そのため彼らの福祉を守るためにエンリッチメントは重要な要素です。
環境エンリッチメントの種類
エンリッチメントにも様々な種類がありますので紹介します。
5つのエンリッチメント
採食エンリッチメント…より自然に近い採食方法▶︎フードのばらまき、宝探し、知育玩具など
認知エンリッチメント…考える機会、選択・判断して結果を得る▶︎トレーニングゲーム、知育玩具など
空間エンリッチメント…行動特性に配慮した生活環境▶︎滑らない床、快適な休憩場所など
感覚エンリッチメント…嗅覚・聴覚・視覚刺激を活用▶︎おもちゃ、ノーズワーク、お散歩、環境観察(チル)など
社会エンリッチメント…同種や異種動物との関わり▶︎ヒトや他個体との安全な関わり
参考:人と動物の共生大学「ストレスと問題行動」
これらのエンリッチメントを犬との暮らしでうまく提供していくと、犬が本来持つ正常行動を行う事ができ、より満足度の高い生活ができるという事です。
環境エンリッチメントの効果は絶大
リラックスを促進しストレスを軽減
2022年1月に発表された研究では、環境エンリッチメントが犬の行動に及ぼす影響を観察されました。
ウスターシャー大学セントジョンズ校理環境学部によるパイロット研究
- 雄4頭、雌6頭が参加
- 8週間にわたり、7種類のエンリッチメント活動をそれぞれ2回ずつ経験させ、その前後の15分間の行動を観察
- 行動をエソグラム(行動目録)を使用して記録
- ヒトとの触れ合い
- ベーコンフレーバーのバブルマシン
- 犬同士の遊び
- ヒトとおもちゃ遊び
- 知育玩具(パズル)
- 知育玩具(食べ物入りおもちゃ)
- トンネル等を設置したプレイハウス
エンリッチメント活動の種類に関わらず、リラクゼーション行動の頻度が大幅に増加し、アラート(警戒)行動、ストレス関連行動が大幅に減少した
出典:Effects of Environmental Enrichment on Dog Behaviour: Pilot Study
この実験観察では、食べ物を使った活動よりも社会的な活動(ヒトや犬との触れ合い)の方が行動の振れ幅が大きかったとの事です。
食べ物を使う場合はその時のお腹の空き具合や、食べ物の種類などによって食いつきも違ってきますから、食べ物を使う活動・社会的な活動といくつかのバリエーションをローテーションして楽しんで貰うと良いと思います。
発散して健全な疲れ・問題行動を減らす
リラックスを促進し、ストレスを減らすという事は、単純に犬が落ち着くということです。
エンリッチメント活動は退屈を解消し、行動上のニーズを満たし、欲求不満を防ぎ、覚醒レベルを下げる
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ストレス発散、興奮度が下がるので、問題行動の減少に繋がる
特にお散歩での引っ張りや衝動的なお暴れ、破壊活動で困っているなら毎日違うエンリッチメント活動を行う事をおすすめします。
犬が活力に溢れて手に負えない場合、発散不足が原因のことが多々あります。毎日エンリッチメント活動をしてみると、見違えるほど犬育てが楽になることも!
ただし、エンリッチメントは犬を疲れさせるためのものではなく、飼育下のすべての動物を満たすためのものです。
本能的な衝動お暴れのことを「プレイドライブ」なんて呼んだりしますが、プレイドライブは犬である限り様々な形で出てきます。それ自体が悪いことではありません。
プレイドライブが出てからNO!と叱ったり、リードショックや首絞めで押さえ込むのでは結局別の問題行動という形で出てきたり、犬は本能を満たせない欲求不満+その度に叱られるストレスに苦しみ、ゆくゆくは学習性無気力感に追い込まれることも。
プレイドライブが出る出ない以前に、エンリッチメント活動によって本能を満たしてあげましょう。
自発的行動と選択肢で犬の自然な成長を促す
エンリッチメントの効果は欲求不満やストレスの解消だけにとどまりません。
自発的なチャレンジによって選択を繰り返して、考える力をUP
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問題解決能力や、自分自身をナビゲートする力を育む
自信がつき、落ち着いた行動力を育む
対処能力を上げるには受動的刺激よりも能動的刺激(自発行動)の方がよいため、自発的行動を促しチャレンジを促すことで、犬自身の問題解決スキルを向上させることができます。
現在のanimal welfareでは、動物が選択することが重視されています。選択する機会は、動物が自らの力で環境をコントロールしていると感じるのを助け、生活の中でより満足を感じることができます(私たち人間もそうですよね!)
犬自身が自発的に選択を行って結果を得る学びを繰り返していくことで、ちょっとやそっとでは取り乱さない落ち着いた自信を育むこともできるのです。
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簡単にできるエンリッチメント活動のヒント
犬用グッズを使う
KONGや知育玩具などにフードやトリーツを入れて楽しむ
KONGはお留守番にもおすすめのおもちゃです
家にある物を使う
タオルや捨てる予定の紙ゴミにフードを隠して楽しむ
↓こちらはインスタグラムに投稿した犬満たしアイディアです
トレーニングを楽しむ
5〜10分でも十分な満足!簡単なオビトレや、トリックゲームなどを楽しむ
お散歩中にできること
おやつやフードをもってお散歩にいこう!
芝生など綺麗な地面にばらまいて食べたり、一粒を探し当てて食べるのも楽しい
自然へのアクセス、穴掘りや匂い嗅ぎを満喫
静かな場所で休憩して環境観察
ご飯をお皿以外で提供する
定番のKONGはもちろん、お部屋やきれいな庭にばら撒いて食べる、隠して探して食べるなど
上に書いたような紙袋や空き箱にフードを入れて提供するのもオススメ
缶フードにはペロ活ができるリックマットもいいですよ
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