いつもご観覧いただきありがとうございます。この記事では日本の犬に関連する書で面白かったものをまとめていきます。
愛犬王平岩米吉伝
著者は「セカンドキャリア引退競走馬をめぐる旅」や2021年に映画化された「犬部!」で有名な片野ゆか氏。
本書は昭和という激動の時代に多くの犬科動物と暮らし研究をした平岩米吉の生涯をまとめたものです。
平岩米吉はこんなスゴイ人物
- 昭和初期にローレンツに先駆けて犬科動物の飼育観察研究を独学でおこない、そのためにたくさんの犬たち・狼・ジャッカル・ハイエナなどと暮らした
- 犬科動物が好きすぎて当時では奇行とも思える室内飼育を行い、奇人と呼ばれた
- シートン動物記などを日本に紹介し、犬の飼育法の本を出版したり、雑誌「動物文学」を発行
- フィラリアの治療法開発に私財を投じた
- 他の愛犬家らと日本犬保存協会を設立
実家が裕福な竹問屋という極太のため没頭する環境とお金が揃っていたとはいえ、狼や縞ハイエナなどとも暮らしたりと、単なる犬好きとは違う生活をしていて驚きです。
当時ジステンパーの研究はアメリカで行われていたものの、アメリカのフィラリア発生地はごく限られていたため後回しになっていたのだそうで。
この方が頑張ってくれなかったらフィラリアの予防や日本犬保存など、もっと遅れていたかもしれないので本当に大感謝!また動物の世話や仕事に協力したご家族にも大感謝という思いです。
本書では犬や犬科の動物たちとの生活や、戦中戦後の愛犬家としての困難など当時の暮らしぶりを読む事ができます。
着物の両袖がボロボロだったなど、愛犬家なら「わかる笑」と微笑ましいお話も
縞ハイエナのへー坊や犬たちとの映像が残っています↓
戦争だけはやっちゃならん
昭和時代の実話なので、微笑ましい犬達との暮らしを読ませて頂きながらも内心暗い気持ちになりながら読み進めていく事になります。
戦争のせいで、多くの動物愛好家が犬や猫を失い、また徴兵によって才能ある方々を失う様が書かれています。
米吉氏は裕福な生まれで親戚なども頼れた事から、なんとシェパードを連れて疎開(!)され愛犬を守る事ができています。
憲兵の目や超監視社会もあり、愛犬を守る事ができた方はごくごくわずかでしょう。シェパード(といえば軍用犬)なので多めに見られていたとはいえ、よく田舎行きの汽車に乗れたなと思います。
戦争のせいで「動物文学」などの活動もストップしており、疎開中〜戦後は貴重な資料を保管する平岩邸を不法占拠され資料を燃やされるなど、最悪。
戦争は動物達との暮らしや教養などささやかな幸せを奪い一部の人間の私腹を肥やすうえ、人々の感覚を狂わせ、当時の議員の中には「犬猫不要論」を主張する者さえいたと。本当に許せませんね。
米吉が提唱したしつけ方
昭和47年に出版された「犬を飼う知恵」では食べ物や病気、しつけについて書かれていました。
当時とびつく犬の足を踏め、などというやり方が当たり前の中で、米吉氏は信頼関係をベースに犬を育てる事を説いています。
こちらの心がけで犬を叱る場面を減らす事、犬に合わせてあげる事、強制はしない事など、現代のR+な犬育てにも通ずるものがありますね。
日本を代表する犬奇人と呼ばれた米吉氏が発行していた動物雑誌「動物文学」には同じように動物大好きの人たちがたくさん集まっていて、また日本猫保存会や日本犬保存会の活動など、先人達の苦労があって今日があるのだなと、とてもありがたい気持ちになる本です。
江戸のドッグトレーナー
以前お散歩の記事でもちょろっと紹介した本です。
著者は鷹匠の修行を経て江戸時代の鷹狩りに使われていた犬達のトレーナー「犬牽」の伝統的なトレーニングを研究・実践している荻島大河氏。
これは本当におすすめの本で、愛犬家は一度読んでおいて損はないです。
現代は「犬を躾けろ、完璧にコントロールしろ」という考えが強いですが、この本を読むと私たち日本人にはそもそも動物を支配強制するのは向いていないのでは?という気持ちになります。
また巷で今日び「伝統的なトレーニング」と呼ばれるものは大戦時代の名残であり、近代のものです。我が国に存在した【真の伝統的なトレーニング】は犬牽の方であるとも思わざるを得ません。
この本では、江戸時代の「犬牽」が実はとても動物福祉的な、犬に寄り添う接し方をしていたという驚きの事実を知る事ができます。
- 無理に犬を攫ってくるのではなく、人に慣れそうな個体を選ぶ
- 犬のペースに合わせて共に生活する
- トリーツを使う
- 叱りは最小限だが基本叱らない
- 犬の心のままにお散歩をする
- 犬の自然な行動を尊重する
- 無理強いをしない
犬とのストレスフリーな生活のヒントも見つかる本だと思います。
私もお散歩は基本「犬の心のままに」の犬牽スタイルですが、この本を読んでやっぱそれで良かったんだね、と思いました!
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犬の伊勢参り
著者は多くの犬×歴史の本を書いている仁科 邦男氏。
本書では明和8年から100年にわたってよく目撃されたという、単独で伊勢参りする犬について読むことができます。
当時の人々が首にお札や駄賃をさげた犬を伊勢神宮まで面倒見ながらリレー形式で連れて行ってくれたなど、昔のヒトと犬の関わり方には感動します。やっぱり人間、優しい人が多かったんじゃね?と思います。
今でも伊勢神宮前おかげ横丁に参拝する犬「おかげ犬」のグッズがたくさん売られています。行ってみたいな〜!
おかげ横丁では犬と一緒に歩いたり、犬用しめ縄首輪を購入することができます。大型犬用があるのが嬉しいし、参拝時は「衛士見張所」または「ペット預かり所」で犬を預かってもらえます。
仁科氏の著書は他にも面白そうな本だらけです↓
- 犬たちの江戸時代
- 犬たちの明治維新
- 生類哀れみの令の真実
- 西郷隆盛はなぜ犬を連れているのか
犬好きでなくとも、歴史や民俗学が好きな方にもおすすめの本です
また本を読んだら追記していきますよ。
それでは、よい犬暮らし&読書暮らしを!
疎開三日後に空襲があったり、疎開先への移動の後にその線路が掃射射撃を受けていたりと、平岩家の運の良さも凄い。