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今回は犬と暮らす人なら一度は聞いた事がある
- 「犬が上に立とうとしているね」
- 「犬に舐められてる」
- 「犬をリーダーにさせてはいけない」
などという思想の迷信について書いていきます。
正しい犬情報をみんなで選ぼう
舐められない様にと厳しくして信頼が育たないペアをゼロへ
厳しく体罰して死なせてしまう・逃走して迷子にしてしまう犬をゼロへ
体罰を使う訓練学校・しつけ教室へ参加しての心身の破滅を防ぐ
主従関係ではなく平和な信頼関係へ
権勢症候群(アルファシンドローム)という概念の流行と危険性
権勢症候群=アルファシンドロームの流行
- 1947年の狼の論文
- 1970年代にシェパードの繁殖をしていた修道院が罰を用いるしつけ本を出版
- 当時のアメリカの軍事主義、マッチョ思想と相性が良かったため爆発的に広まる
※修道院は当時の間違いを認めているとのこと
10年遅れて1990年代に日本にも浸透し、当時から現代にいたるまでしつけ本やしつけ教室などで猛威を振るいました。
現在、犬には権勢症候群がなかった・犬はヒトと順位付けをしないという事がわかっていますが、残念ながら今でもトレーナー学校や警察犬訓練所などではこの古い考えから脱却できていません。
つまりしつけ教室やトレーナー、訓練士、かいぬしさんが学ぶための情報を探す際は注意が必要という事になります。商売のためなかなか世代交代ができないのか、日本だけでなくアメリカや他国でも未だにこの考え方のトレーナーが残ってしまっています。
- 当時犬は家庭内で順位付けをするとされ、常にボスの座を狙っていると誤解されていた。
- 甘やかして育てられた犬は、自分がリーダーだと勘違いして噛み付いたりなどの権力を振るう様になると信じられていた。
- 犬の問題行動および従順でない犬、自立心が高くヒトの思い通りにならない犬、恐怖からの攻撃行動などをまとめてそう呼んだ。
- パックリーダー論、支配性(ドミナンス)理論、アルファ理論などとも呼ばれる。
この考えによって導き出され、流行したのが↓の様な古いしつけのやり方です。
上下関係・主従関係を子犬のうちから叩き込む
犬が前を歩いたらリードショック
食事は人間が先・食事前に長いマテや食事中に没収する
犬のマズルをギュッと押さえるマズルコントロール
強制的な仰向けだっこ(アルファロール)
トイレを失敗したら鼻先を押し付けて叱る
…これはほんの一部。体罰や力で押さえ込むしつけが流行りました。
これらは現在では効果的でない・犬の心身と信頼関係を破壊する・怯えや守り行動から噛む犬にさせてしまう等として、動物行動学者や最先端のトレーナーが警鐘を鳴らしています。
狼の群れの研究結果から間違いが判明した
権勢症候群=アルファシンドロームの元となったのは、狼の群れの研究でした。
- 飼育下の狼の群れで上下関係が築かれる事がわかった
- 群れの最上位個体(アルファ)は食事や寝床の使用などの場面で優先権をもつ
- 群れの中ではアルファの座を巡って緊張・挑戦(攻撃)が見られた
寄せ集めの狼達を飼育下に収容して強制的に作られた群れであったため、間違っていた事がわかりました。
しかしそれは野生の狼の群れを観察する事で正しい情報へアップデートされました。
- 野生の狼の群れは基本的に血縁のある家族で構成される
- 支配的な順位はなく、食事の譲り合いなど支え合い協力している事がわかった
- 家族での子育て、老体や怪我をした個体への世話、カラスなど他種との連携などが行われ、単純に弱肉強食とは言い難い
- 狭い飼育下と家族ではない寄せ集めの群れでは、野生とは異なる行動が出てきてしまう
- アルファは力で下位の個体を支配するボスではなく、単純に繁殖をする個体つまり親に使われる単語
- 野犬の群れでも絶対的な順位関係は見られなかった
この様に、昔の狼像は大きく否定され、また狼と犬は別の生き物であるという考えから狼の実験をそのまま犬に当てはめるのは無理がある、と言われています。
狼と犬の違いについてはこちらの本も面白いですよ▼
権勢症候群=アルファシンドロームになるのって人間じゃね?
これは私の考えなのですが、犬や狼などの動物は他者に対して支配的にならない事がわかりましたが、人間はどうでしょうか?
私たち人間は長い歴史の中で幾度も戦争を起こし、争い、支配しあってきましたよね。そんな歴史を持っている私たちの中には、他者を支配したいとか他者の上に立ちたいという争いの本能が組み込まれているのではないでしょうか。
そういう支配的なものが人間の脳にあるからこそ、吠えたり噛む犬を見て「上に立ちたがっている!アルファシンドロームだ!」という発想が出てくるのでは?と思います。
権勢症候群=アルファシンドロームは人間の概念であり、大変人間的な考え方。他種族の上に立とうなどという考え方はとても傲慢でみっともないです。
そして私たちの祖先が人類の伴侶として迎え共に発展してきた犬を、今頃急に上に立たせると危険な生き物と認定して痛めつけるやり方は、人類史への冒涜でもあると思います。
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体罰を使わないしつけで平和に楽しく暮らそう
権勢症候群=アルファシンドロームが流行っていた当時のしつけでは「とにかく犬を許さない・叱ってしつけること」「犬の行動を減らし自由を制限すること」が主流で、それは犬の反応がどうあっても強制的に行うという、思考停止していてもできる方法なので簡単でした。
「犬が前を歩いたらリードショック」「甘噛みにはゲンコツを口に突っ込む」など、「犬が○○したらこうする」という単純なルールがあったので、深く考える必要がなかったんですね。
うまくいかなければ「犬が言う事を聞くまで根気よく続けましょう」と言われるだけでした。このため大した勉強をしていない者でも訓練士として指導ができてしまいます。
また昔のトレーナーや訓練士は学歴や人格は関係なく、気が強く体育会系の縦社会が得意で体力があり腕っ節が強ければ住み込み修行などして誰でもなれてしまいました。そういう人たちの中には何十年前に習った事を盲信し新しい事を勉強するのを嫌う人がいるのも仕方がないのかもしれません。
※資格や肩書きを持っているプロでも、厳しさや体罰、嫌悪刺激を与える道具を使わなければ業務ができないトレーナーは、最新の犬情報を勉強していない可能性があります
現在では動物の行動学をベースに犬をよく見て、状況をよく見て行動を分析し、ABAを用いて望ましい行動を強化する形が理想です。
して欲しくない行動に対しては人間がたくさん考えて原因を探る事が必要になってくるので、昔より大変に思えるかもしれません。
厳しく叱らないで拾い食いや飛びつきはどうやって制御するんだ!という声も聞こえますが、拾い食いしない事も教えるし、飛びつかない事も教える事ができます。厳しく叱らずにね。
人間が犬と周りをよく見てよく考えて、
- ハズバンダリートレーニング
- クリッカートレーニング
- 正の強化
などを用いれば厳しくしなくても犬は楽しく行動できる様になります。
最先端のトレーニングでは、体罰や嫌悪刺激を使って犬を痛めつけたり厳しく叱ったりしないため、犬が身を守る必要がありません 噛む犬になってしまう可能性や、逃走させて迷子にさせてしまう可能性がぐっと下がります。
体罰トレーニングがなくなり、社会化期を適切に過ごせないペットショップの生体陳列販売がなくなったら…噛み犬専門訓練所なんて消えてなくなるかも!
※幼少期に適切なケアを受けられない事や、社会化不足も噛む行動etcの原因となっているため
アルファシンドロームをベースにした犬に厳しく当たるしつけは恐怖や嫌悪で支配するので根本的な解決にならず、非効率(一時的には効率的に「見える」事もある)で非人道的なやり方が多いです。
そんなものよりもずっと効果的で犬とかいぬしさんの信頼関係がどんどんプラスになる方法を使いたいですよね!
私は犬に必要なのは絶対的強者のボスではなく、安心安全の保護者・人間社会でのガイド役ではないかなと思っています。
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