ご観覧いただきありがとうございます。今回はうちで行ったパピーの社会化についてまとめようと思います。
生後3ヶ月(12週)ちょい位までは積極的に社会化を
なぜ生後3ヶ月までの社会化が大切なのか
社会化期についてAVSAB(アメリカ獣医動物行動学会)では、生後3ヶ月までが最も重要としています。
この期間中に安全に、過度な恐怖・引きこもり・回避を引き起こす過剰な刺激ではなく、可能な限り多くの新しい人、動物、刺激、環境にさらされる必要がある。
最初の3ヶ月は恐怖よりも社交性が勝る時期であるため、子犬にとって新しい人、動物、経験に適応するための主要な機会となる。
子犬の免疫系は最初の数ヶ月は発達段階にあるが、母親の免疫、一次ワクチン接種、適切なケアと組み合わせる事で、問題行動による死亡の可能性に比べて感染のリスクは比較的低くなる。
AVSAB Position Statement On Puppy Socialization より
家の中でもいろんな社会化活動を行いながら、ワクチンプログラムが全て終わるのを待たずに、抱っこやカートで外に連れ出したり、管理された環境でのパピーソーシャルクラスに参加するという事です。
幼少期に社会性を身につけられなかった犬に関する研究によると、そうした経験は健康や長寿に深刻かつ長期的な影響を及ぼす。
アメリカの若犬の死因において、感染よりも社会化不足と直接相関する行動問題の方が多い。
具体的な社会化活動の内容
The puppy’s rule of twelveを参考にして、できる範囲でいろんな刺激を紹介しよう。
The puppy’s rule of twelveとは
海外の様々な人道協会やトレーナーがすすめている、パピーの社会化のガイドライン。
目標は子犬が新しい経験に触れ、将来恐怖を感じない様に手助けすること。
主に12週までに12の異なる物事を子犬に紹介しよう、という内容です。
※12週を過ぎていても、焦らず進めていけば大丈夫!
長くなりますが、どこの団体もおおよそこの様な感じの内容↓
- 12の地面▶︎木、ウッドチップ、カーペット、タイル、アスファルト、草、土、濡れた地面、泥、水、トリミングテーブル、椅子〜等
- 12の物▶︎ふわふわぬいぐるみ、大小のボール、硬いおもちゃ、音の鳴るおもちゃ、木のおもちゃ、紙、段ボール、プラ、金属〜等
- 12の場所▶︎庭、他人の家、校庭、湖、池、川、船、地下室、エレベーター、車、車庫、ランドリー、動物病院、カフェ、グルーミングサロン〜等
- またこれらの場所でおやつを食べる
- 12の人▶︎子供、大人、老人、車椅子、歩行器、杖、帽子、サングラス〜等
- 12の音▶︎ドア、ドアベル、子供の遊ぶ声、赤ちゃんの声、トラック、バイク、スケボー、ショッピングカート、拍手、馬、掃除機、芝刈り機、花火〜等
- 12の素早いもの▶︎車、自転車、電車、バイク、ランナー、猫、リス、ボール〜等
- 12のチャレンジ▶︎登る、降りる、入る、出る、くぐる、階段、乗り越える、探す、傘の開閉、バスタブの中〜等
- 家族のメンバーによる12回のハンドリング▶︎抱っこ、床で保定、足の間で保定、体温を計る、ブラシをかける、爪切り、等
- 12の物にフードを入れて食べる▶︎フードボウル、段ボール箱、新聞紙、マグ、陶器、パイ皿、プラ、金属、コング、おもちゃ、スプーン、紙袋〜等
- 12の犬▶︎子犬、穏やかな成犬、穏やかな老犬
馬とか湖とか船とか、お国柄も出ますね〜
地域によってのちのち慣れておいた方がよいと予想されるものは違うので、そこは各ご家庭で調節が必要だと思います。
田んぼが多い地域ならあぜ道とか、トラクターとか、散歩コースの踏切の音といった具合に。
もし地元新潟に住んでいたら、郵便配達の音や除雪車の音なんかもYouTubeで聴かせておきたいかな
強制的ではなく子犬の自由なペースで安全に
この時期の経験は良かれ悪かれ、後に残りやすいとされています。特に怖かった、圧倒されたなどのネガティブな経験の方が残りやすいんだとか。
なので子犬は安全に環境を自分のペースで探索し、怖いことは何も起こらなかった!を経験する必要があるんですね。
大興奮や怖いものを増やさずに、あれもこれも知ってるね、どうって事ないね〜!を増やす為には、子犬が安全だと思えている事=かいぬしが強制しないこと、ボディランゲージ特にストレスサインを見れる事がかなり鍵になります。
リーシュをぐいぐい引っ張って動かしたりしない事、逃げたいのに抑えつけない事も含まれます。
子犬には穏やかで精神的な回復力のある自信のある子に育ってほしいですよね。
そのためにもまずは快適で安全で強制・矯正のない社会化を体験してもらいたいものです。
かいぬしはただ助けてくれる存在である事、矯正や強制や首を絞められたり叱責されたりしない事は強い自信と信頼関係を育てます。
誰も助けてくれない、頼れるはずだったかいぬしは拘束したり叱ってくるという体験をさせてしまうと、犬は誰も頼れなくなり逃走や迷子のリスクが高まりますから、犬には優しさを!
音を紹介するには、遊んでいる時におやつを食べたりしながら小さい音で録音を流す事もできます。
特に花火、サイレン、雷などはYouTubeで探せるので、この方法がおすすめ。
これは怖がるんじゃないかな?と予想されるものを紹介する時は、美味しい食べ物と一緒に。
外に行った時に大きい音のバイクが通ったとか、救急車の音が聞こえたとか、子供たちの遊ぶ叫び声とか、ちょっとびっくりする様な出来事があると思います。私たち人間の大人も驚いたりしますよね。
突発的な刺激との遭遇に備えて、刺激と同時or刺激の後にすぐ美味しい食べ物をあげられる様に、小さくちぎった物を持っておきましょう。
- 犬は人が気にしないレベルの音や匂い、足の裏の感覚などの刺激も敏感に拾う事を知っておく▶︎動物行動学の本を読んでおく
- ボディランゲージ、ストレスサインを知っておく
- リーシュを引いてコントロールしない・強制しない
- 他の犬に会う場合、相手の犬のストレスサインも見る→子犬を守る事はもちろん、相手がストレスを感じているなら間に入って壁になってあげたり、距離を取る
- 人に会う時は取り囲まない・ゆっくり触る様に頼み、子犬が自分で逃げられる退路を確保
- 食べ物をあげる場合は刺激を見た→食べ物の順番で
- 安全を確保して子犬が自分で物事を調べられるよう、見守る
- 子犬が助けを求めに来たり、ストレスサインが見えたり、圧倒されて固まったりしたらただちに守ってあげる
- 無理せず短時間から始め、短時間をちょこちょこと
ただ刺激に晒すのではなく、子犬が安全を感じられる事と、子犬のペースで自由にが大事!
かいぬしの仕事は安全を確保する事と、犬自身が自分をコントロールできる様になるためのサポート役〜!
ブリーダーさんがやってくれた社会化活動
ありがたい事に菊ちゃんのブリーダーさんは早期社会化活動をいろいろやってくださいました。
こちらのシリアスブリーダーは子犬が新しい家に行った時に困らない様、早期社会化にかなり力を注いでいるみたいです。
- 牧場なので、鶏やその他の動物を知っている
- 草、土、泥、砂利、池で兄弟や成犬達と水遊び
- 家の中での家電の音
- シャンプーや爪切りなど
- 病院やいろんな人
それに加えて呼び戻しとケージやクレートに入る事も教えてくださっていて、迎えにいった日にはもうcomeができてました。助かる!
なので家での掃除機やレンジの音など、一応慎重に紹介しましたが「その音知ってる、大丈夫なやつ」って感じで超楽でした。
実際にうちで行った社会化活動
- いろんな音を小さい音量で聴く
- いろんな物のある環境で食べたり、いろんな物から食べたり
- 将来使う物を紹介
- 使った食べ物は菊ちゃんの場合、フード(キブル)<フリーズドライ<ゆがいた肉の順で高価値
- カートでお外を見学
家の中で、いろんな音を聴く
上に書いていた様に、花火や雷などをYouTubeで探してきて小さい音で遊んでいる時に流し、食べ物を食べながら徐々に音量を上げました。
うちのビルは時々火災報知器のテストがあるので、アラーム音は小さい音から始めて大きめまで行いました。あと必ず大きい音を聴く機会がある救急車とパトカーも。
ボディランゲージを見ながら、徐々に音量を上げますがストレスサインが見られる場合は音が大き過ぎます。
こっちの救急車とパトカーって、スッゴイ音なんですよ!
職員のトレーニングの為か、散歩中は頻繁に遭遇するので価値の高い食べ物を持参します。
アラーム音も日常生活の中で突然大音量で鳴るため、生涯を通して価値の高い食べ物を提供します。
ブリーダーさんがやっていてくれたけど、音が違うかもしれないので湯沸かしの音や掃除機の音にも食べ物を提供。日本人家庭ならではの炊飯器の炊き上がり音も。
ドライヤーはまずドア越しに、家族が髪を乾かしている時に食べながら聞いてもらいました。
玄関の外の廊下から、赤ちゃんが泣きながらベビーカーで運ばれたり子供たちが遊ぶ声が聞こえた時、宅配が来てノックされた時も何か食べてもらいました。
家の中のいろんな場所、いろんな物から食べる
いろんな部屋や廊下でフードを少しずつ食べました。バスルームは将来シャンプーやドライをする場所なので慎重に、タイルの床、バスタブの中で。
バスタブの中は滑るので、怖い思いをしないため&足のためにも滑り止めマット必須です。
いろんな物をフードボウルにしてフードを食べました。
エンリッチメントで紙や卵パックを破壊しながら食べる事もあるでしょう。お散歩中には、食べられないけど良い匂いのする物と遭遇する事もあるでしょう。
食べられない物と食べ物を区別してほしいので、紙やプラなどは器であるという体験を幼少期にしておく、これはいい学びになると思いました。
怪我や介護を見越して、スプーンでヨーグルトぺろぺろやスプーンに乗ったキブルを食べる事、またスポイトでお水を飲むなども。
犬具の紹介
首輪、ハーネス、リーシュ、ブーツ、お手入れ用品などをスモールステップで紹介しました。
最初は床に色々おいて、フードをばら撒いて自由に食べながら匂いを確認。
首輪やハーネスの留め具の音、ブーツのマジックテープの音、爪切りでパスタを切る音、バリカンの音を鳴らすたびに食べ物を提供。
犬具の音を紹介した後は実際に使うためのハズバンダリートレーニング、Cooperative Careに進みます
カートでお外を見学
食べ物を持って社会化見学にいこう!かいぬしは引率の先生役です。
カートで行った場所
- 将来散歩コースとなる道
- カフェ
- 公園
- ペットショップ
- ドラッグストア
- 郵便局
- 動物病院
動物病院ではチヤホヤしてもらっておやつ貰うだけの「Happy visit」をさせて貰いました。
楓の時はすぐ使わなくなるじゃん置く場所がないじゃんと家族に反対されて買えなかったカート、今回は買って本当によかったです。
レオンベルガーのパピーなんて重過ぎてとても抱っこやスリングじゃ運べません。
大型犬を2頭連れたご婦人に「カートで社会化は良い方法だ。いつか介護でカートが必要になった時、あなたの犬はすでにカートを知っているからね」と言って頂けました
カートでの注意点は、犬が自分で移動したり距離を取ったりできないことと、よその犬の中にはカートが苦手な犬がいることです。
カートに入っているんだから大丈夫でしょ!と決めつけてしまうとネガティブな経験をさせてしまいかねません。大きな音のする場所や混雑に無遠慮に近づけたりはしません。
またよその犬に急激に近づけない様、向こうから来た犬のボディランゲージを見てストレスサインが見えたら道を譲ったりと気をつけてます。
社会化は一生続くよ
今まで受けたいくつかの子犬育てのコースによると、社会化の窓は3ヶ月で閉じるとはいえ、完全な社会化期は2年であり、その後も一生続くとの事。
特に生後半年位〜には脳の成長に伴って今まで感じなかった恐怖や不安を感じるようになったり、刺激に敏感になる場合があるのでなおさら社会化+叱責や嫌悪刺激を使わない育て方が大切になります。
最初の2年は特にポジティブ〜どうって事ない経験ができる様にサポートし、その後生涯を通じてゆるやかに社会化を維持していきます。
かえちゃんが自信満々ドッグに育った様に、菊ちゃんも社会化とエンパワーメントを大切に育てていきたいと思っています。
そんな感じで今回はうちでやった子犬の社会化についてまとめてみました。
それでは、よい犬暮らしを!
地面・場所・よその犬については、ワクチン1〜2回打っていても心配ならとりあえず抱っこやカート散歩でいいと思います。
野生動物や他の犬の糞尿のない庭があれば最高ですね!
日本はちょっとわからんのですが、北米ではワクチン終わってない子犬同士の社交会がドッグスクールで開催されていますので、力を使わないプロの手を借りることもできます。