いつもご観覧いただきありがとうございます。
以前適正飼育の第一歩として室内飼育のすすめについて書きました。
けれど犬も猫も、室内飼育は正しい飼育管理の一歩目であり、家の中に入れればそれでいいんでしょーというわけではないんですね。
今回はもうちょっと踏み込んで、適正飼育って?具体的にはどう考えたらいいの?というお話です。
適正飼育のための基礎知識を入れよう
迎える前に犬を知ろう・もちろん迎えてからも!
日本ではペットショップでの生体販売があるため、お金さえ払えば犬に関する知識がなくても・飼育への備えがなくても、比較的簡単に犬を購入できてしまいます。
よく相談サイトやSNSなどで、「3日前に犬を迎えました。トイレの教え方がわかりません」「初めて犬を飼うので、何をどうしたらいいのかわかりません」と言ったような戸惑いの声を見かけます。
犬を迎えるなら幸せに暮らしたいし、犬を幸せにしてあげたいですよね!
そのためにはまずは大好きな犬について、知識をつけるのがおすすめ!
- 犬がして欲しくない事をした時の対処や、それをさせない為の対策がわからない
- 犬はどんどん育つので「あの時ああしてあげれば良かった」などの後悔が出てくる
- いろんな事の教え方がわからない
- 犬の健康に良い物・悪い物がわからない
- 体罰を使うトレーナーと契約してしまう
前知識ナシで迎えてしまうと、ここには書きれない位、困った事がおきます。
特に体罰を使う様になると犬の犬生は波乱万丈になってしまい、ヒトに対して不信感を抱いたり、怖がらなくていい物を怖がる様になったりする事も。
でも事前に犬についてあれこれ知っておくことで、何も知らずに迎えるよりも断然楽ですし幸福感も増します!
- 動物福祉→適正飼育のめやすやエンリッチメントなど
- 動物行動学→ボディランゲージなど犬という生き物の知識
- 応用行動分析→普段の接し方やしつけ(よく出てくるのは正の強化や条件付け)
- 迎えたい犬種について→参考としての犬種特性や成長後の大きさなど
- 体のこと→予防接種や食べてはいけない物、怪我や病気など
大体この辺りを調べていくと、本当に良い事がいっぱいあります!
- 犬に詳しくなる→誤解がなくなりもっと犬を好きになる
- 初日から始めたいトイレトレーニングやしつけの方法で何が正しいのか・やってはいけない方法は何かが判断できる様になる
- 犬がつらい思いをする道具や罰を使わない、最先端のトレーナーを選べる様になる
- 犬ができる事が多くなり、より仲良く信頼関係を築けるので、活き活きとして毎日が楽しくなる→シニア期のQOL低下を緩やかに
などなどたくさん!
動物行動学やボディランゲージを調べておくと、犬とヒトとの誤解でよくある「なめられているのでしょうか」「急に噛むようになりました」という様な、めちゃくちゃ困る事が減ります。
それでしつけはどうすればいいの?には応用行動分析(ABA)が役立ちます。
最初は難しく感じるかもしれませんが、「良いことをしたら褒めましょう・タイミングよく低い声で叱りましょう」ではなく、「正の強化」や「各種条件付け」を入り口にして調べていくと世界が変わります!
好きな犬種が決まっているなら、その犬種がなぜ作られたのか?どんな作業をしていたのか?を調べると、自分のライフスタイルに合っているか・その犬種にはどんな環境や世話が必要なのか(手に負えるか)のおおまかな判断がつきます。
メディアでは「とっても賢い」など耳障りの良い事しか書いていなかったり注意事項が「しっかりしつけましょう」だけだったりで、参考になりません。おすすめは英語検索で海外のコラムや海外ブリーダーのHPを読むことです。Chromeで翻訳を通すと簡単です。
私は楓を迎える前、先代犬の時の知識+トリマーとしての知識しかなかったので、もっと知っていたら良かった!悩まなかった!と思う事が多かったです。
動物愛護の観点から見る飼い主の条件とは
さて日本には動物愛護という独自の視点があります。以下は日本動物愛護協会による、「飼い主に必要な10の条件」です。
- 住宅がペットを飼える状況にあること
- ペットを迎えることに家族全員の合意があること
- 動物アレルギーの心配がないこと
- そのペットの寿命まで飼育する覚悟があること
- 世話をする体力があり、その時間をさけること
- 高齢になったペットの介護をする心構えがあること
- 経済的負担を考慮すること
- 必要なしつけと周囲への配慮ができること
- 引越しや転勤の際にも継続飼養する覚悟があること
- 飼えなくなった場合の受け皿を考えておくこと
日本動物愛護協会HPより引用
ご自分の家庭が動物を飼うことが本当にできますか?という条件ですね。
これらは動物を迎える前に考えるべき最低限重要な条件だと思います。無理そうなら迎えないというのも愛だと思いますよ。
そうなんです。我が国の動物愛護は動物を飼育するための最低限の条件であり、動物愛護精神を通して人間が豊かになりましょうみたいな感じなので、適正飼育のめやすにはならないんですよね。
また動物愛護という飼育動物に対する態度が曖昧な我が国では、動物福祉に反している繁殖業者や罰を使う訓練士トレーナーなどが「可愛がっていればよい」「愛情があればよい」などデカい顔をしてしまっています。
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動物福祉「5つの自由」が適正飼育の目安になる
動物福祉 アニマルウェルフェアとは
近代以降に西洋で生まれ最初は家畜動物を対象に大きく発展した分野です。
日本では2022年4月に待望の教科書が発売となります。ちょっと高いのでカナダから買うのに躊躇しますが私も欲しいです↓
- 動物福祉に配慮している▶︎動物が精神的・肉体的に健康で環境とも調和している状態
- 良好な動物福祉▶︎動物自身が選べる選択肢があり、ポジティブな経験が増え、ネガティブな経験が少ない
動物の利用を認めた上で、ヒトが動物に与える苦痛やストレスを最小限に抑え、動物の待遇改善を図る考え方。
飼育下の動物の環境はあらゆる制限をかけられているため、自身で種の持つニーズを満たす事が困難です。そのため飼育者は良好な福祉状態を確保しなければなりません。
「可愛がられているか」「愛情をかけられているか」などの感情的な評価ではなく、客観的・科学的な根拠において、動物の状態や飼育環境が良いか悪いかを評価・判断します。
動物の福祉をとらえる為の3つの要素は
- 動物自身の主観的経験(感情、認知、情動など)
- 動物の生物学的機能性(健康、適応度、ストレスなど)
- 動物の本例の性質(正常行動など)
ですが、この3つを考慮し総合的にどう評価するのかが重要であり、その総合評価の一つが「Five Freedoms 5つの自由」です。
Five Freedoms 5つの自由
5つの自由はとてもわかりやすいので、一般家庭での犬猫飼育の目安にもなります。
めやすにできるFive Freedoms
飢えと渇きからの自由
- 栄養的に十分で適切な食べ物が与えられているか
- 常時綺麗な水が飲めるか
不快からの自由
- 適切な飼育環境であるか
- 天候から身を守れる快適な休憩場所を含んでいるか
- 清潔で怪我をしない飼育環境であるか
痛み・傷害・病気からの自由
- 予防及び的確な診断と迅速な処置
恐怖や抑圧・苦悩からの自由
- 恐怖や精神的苦痛、不安、多大なストレスがかかっていないか
- それらのストレスの兆候を示していないか
- それらを避ける事のできる状況の確保、的確な対応
正常な行動を表現する自由
- 正常行動を発現するための十分な空間・適切な設備があるか
- 習性に応じて群れあるいは単独で飼育されているか
※資料によっては4と5の順番が逆になるものもあります
犬の場合特に気をつけるのは?
5つの自由のうち、1〜3は飼育放棄を受けていない一般的な家庭犬の中では満たされている子が多いかもしれません。
ここでは一般的な家庭が福祉に反しやすい可能性のある
と について見てみましょう。恐れと苦痛からの自由が侵されやすい例
- 主従関係や上下関係を指導するトレーナーに依頼してしまうと、愛犬がリードショック・コレクション・電気首輪ショック・首の吊り上げなどを受けてしまう
- ボディランゲージを読めないと、犬が怖がったり痛がったりしているのを喜んでニコニコしている等と勘違いしてしまう(ストレススマイルをスマイルと読み間違え・相手をなだめたくて擦り寄る行動をなついていると勘違い)…など
- トリミングなど嫌がる事を我慢させて行う
解決策の例
- 動物福祉・動物行動学・応用行動分析を基礎とした科学的で人道的なアプローチを行うトレーナーや行動診療科を選ぶ
- 行動学を学ぶ、ボディランゲージを読めるようになる
- 犬を叩いたり叱ったりしなくて良い環境設定
- ハズバンダリートレーニングを学ぶ
ハズバンダリートレーニングは採血や治療などの際のネガティブな経験を減らすために動物園でも行われています。
ボディランゲージが学べる本のおすすめはこちら▼
自然な行動を行う自由は侵されやすい
- 飼育下という制限の中では、その種の持つ本質的な行動や環境へのアクセスが限られやすい
- 本質的な行動に従事する機会が慢性的に不足すると、過剰な吠えや破壊、犬自身でコントロールできない興奮、自傷行為など犬の健康と幸福に深刻な影響を与える可能性がある
解決策
- 行動学や犬の生態を学ぶ
- エンリッチメントの提供
エンリッチメントはアニマルウェルフェアの重要な要素です。
分かりやすい例では、知育玩具を使ってのフード採食や、お外での匂い嗅ぎなどがそれにあたります。最近は犬界隈でも「採食エンリッチメント」や「環境エンリッチメント」を目にする機会が増えましたね。
犬満たしは工夫とアイデア次第で5分でできるものもあります。
簡単にできる犬満たしについてはこちらの記事をどうぞ▼
ある国では犬は6時間ごとに外に出す事などの決まりがあります。日本の場合は市町村のルールと併せて、日本動物福祉協会で無料DLできる飼養管理ガイドラインをどうぞ。
また同協会では定期的に誰でも無料で視聴できる動物福祉市民講座(YouTubeでの限定公開)を開催しています。
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日々の学びと動物愛護と動物福祉の合わせ技でいこう
動物愛護は日本独自の視点であり、愛護という言葉は英語にもしづらいものです。
動物愛護精神は大切ですが、5つの自由の様にはっきりとした目安がないため「可愛がっていれば何をしても良いのか」「自然のままがよい(と思う)ので愛情を持って放っておく」という状況になる事もあります。
福祉と愛護という違ったものが発展した土壌には、動物は人間が支配し管理するものであるというキリスト教圏と、無益な殺生をしてはならぬという日本古来の文化の違いがある様です。
人間は自然や動物とお互い様であるという古くからの日本の考え方に、犬への基礎知識と、適正飼育をしようという動物福祉の知識が乗っかれば、日本人は最強ではありませんか?